②給与所得者等再生手続
主にサラリーマンを対象とした手続です。
この手続を利用するためには、小規模個人再生と同じく
・借入総額(住宅ローンを除く)が5000万円以下であること
・将来継続的に収入を得る見込みがあること
という条件を満たすことと、それに加えて
・給与またはこれに類する定期的な収入を得る見込みがあること
が必要です。
そして、この手続では、清算価値保障原則と小規模個人再生の最低弁済額要件をクリアすることに加えて、再生債務者の収入や家族構成などを元にして可処分所得(※3)を割り出して、その2年分以上の額を弁済原資に充てることが必要となります。
※3 可処分所得とは、収入から、所得税と生活費を差し引いた後の、自由に使うことができる所得のことです。生活費については、生活保護費を基準に算出します。
もっとも、実務上では、サラリーマンの方が再生手続をする場合でも、多くのケースで、給与所得者等再生手続ではなくて小規模個人再生手続が選択されています。その理由は、この手続ができた当初、給与所得者等再生手続は、小規模個人再生手続と違って再生計画案に債権者の同意が不要とされている点がメリットになるだろうと考えられていたのですが、実際に運用を始めてみると、小規模個人再生の案件でも、債権者の不同意が出る場面はあまりないということが分かってきたことから、そうであれば、可処分所得の2年分以上の額を弁済原資に充てなければならない給与所得者等再生手続よりも小規模個人再生の方が再生債務者にとって有利だろうと判断されることが多くなってきたからです。
また、住宅を維持する場合は、再生計画に基づく弁済期間中、住宅ローンの弁済については再生計画に基づく弁済とは別に行っていく必要があると考えられています。そのため、給与所得者等再生手続を選択した場合、可処分所得を弁済原資に充てる結果、最低限度の生活をしていくことになるにもかかわらず、そこから更に住宅ローンの支払いに充てるお金を工面しなければならないということになるのです。もちろん、再生計画に基づく弁済期間中については、住宅ローンの元本の一部を猶予してもらう形で弁済月額を減少させることができますが、それでも生活が相当厳しいものになるだろうことは間違いありません。
ですから、サラリーマンの方でも、いきなり給与所得者等再生手続を選択するのではなく、小規模個人再生手続を選択できるケースかどうか、弁護士に一度確認してもらった方が良いでしょう。